洗顔フォーム、旅の初犠牲者になる
出発前:ワクチンで諭吉が消える
アフリカは、行く前から金がかかる。狂犬病(ラビピュール)が 1.5万円×2回=3万円、A型肝炎が 1万円×2回=2万円、黄熱病が 2万円。出発前のワクチン代だけで、しめて 1人 7万円。旅はまだ、始まってすらいない。
旅は、没収から始まった
成田の保安検査で、僕の洗顔フォームが「チューブ入りの液体」と認定され、あえなく没収された。旅の最初の収穫は、収穫ではなく喪失だった。完全なるフラグである。
エチオピア航空(成田→仁川)、装備が満身創痍
意気揚々と乗り込んだ機内は、想像の斜め下をいく仕上がりだった。
- 自分の席:モニターはタッチしても無反応、ボタンも沈黙
- 隣:操作ボタンが物理的に破壊済み
- そのまた隣:イヤホンジャックが陥没して、無音の上映会
席ガチャ、まさかの全員ハズレ。それでも機内食はちゃんと出てくる。設備は捨てても乗客の胃袋は守る、強い意志を感じた。
仁川 → アディスアベバ
ここでもご飯は2回。やはり胃袋だけは満たしにくる。ブレない。
アディスアベバで、双眼鏡が人質に(没収②)
着いた途端、今度は双眼鏡が arrival の baggage service に連行された。宿は Tolip Olympia。外の空気を吸おうと一歩出た瞬間に止められ、実質の軟禁。初日にして自由がない。
夕食に出た赤いジュースは、なぜか吐瀉物のような匂いがした。ひと口飲んだ仲間が即リバースしていたので、たぶん本当に腐っていた。そして名物のインジェラ。酸っぱくて、グレーで、集合体恐怖症の敵みたいな見た目の、雑巾を思わせる一品。美味しくはない。だが、これも経験だ。
双眼鏡、奪還ミッション
翌朝、回収場所が分からない。聞けば「保安検査を逆走して arrival へ向かえ、ただし逆走前に脇のオフィスへ申告せよ」という高難度クエスト。しかも窓口は前の人のロストバゲージ相談で1時間近く封鎖中。
搭乗15:00、時計は14:50。意を決して割り込み交渉し、15:05に双眼鏡を奪還、15:18に搭乗口へ滑り込んだ。ラスボス戦より緊張した。
キリマンジャロ行きで、情緒が壊れる
乗り換えた機体は一転、ANA と変わらぬ綺麗な内装に、美味しい機内食。あまりの落差に泣きそうになる。
なお事前に仕込んだ eSIM(airhub・楽天モバイル)は全滅。正解は、出口で買える $10 / 7GB / 1週間のSIMだった。通貨はシリングとドルが基本(2025年9月時点で1000シリング≒600円ほど)。
アルーシャ:本旅いちばんの優男・James
空港送迎をお願いしていたのは、この旅最優の優男こと James。20:20 手配のところ、19:30 に着くよう先回りしてくれていた。なのに第一声は「遅れてごめん、水買うわ」。こちらの方が早かったのに、どこまでも腰が低い。いい人すぎる。
宿(Airbnb・City Retreat Arusha)はキーボックスの鍵が見当たらず、21:30 に James が電話で解決。荷物を全部下ろし、入室を見届けてから帰っていった。3日後の早朝タクシーも彼の手配だと判明し、チップ $10(6人で割って1人 約250円)を握らせる。James、本当にありがとう。
——そしてこの夜、仲間の一人の脇が腫れ始めていた。(伏線)
深夜、ドライヤーでブレーカーが落ちる。翌朝の集合時刻を尋ねると「6時かな、やっぱ7時かな、宿行くから」と返ってくる。念押しすると「see you today」で通話終了。today の、何時だ。